こどもの虐待死事件が
テレビのニュースで大々的に取り上げられており、
深刻化する前に何かできなかったのか?
と感じますよね。
保育園でも児童虐待疑い事例に関わることはあるので、
必要最低限の知識は必要です。
今回は、保育園看護師が知っておくべき
児童虐待の実態と予防策についてご紹介します。
児童虐待相談・対応件数
児童相談所が対応した件数は214843件で、
年々最多を記録しています。
ただこの数値は、対応した件数なので、
そのうちどれくらいが虐待と判定されたのかは不明です。
注意が必要なのは、
虐待相談の分類
●身体的虐待:殴る、蹴るなど分かりやすい暴力
●ネグレクト:こどもの世話をしない、こどもを一人で長期間放置するなど
●性的虐待:体を触る、大人の性器を見せる、性交など性的なこと全般
●心理的虐待:こどもに暴言を吐く、こどもがDVを目撃するなど
令和2年度は、心理的虐待の割合が前年より多くなり、
件数も約12000件増加しています。
一番少ないのは性的虐待です。
ただ、被害を訴えられないことも多いため、
性的虐待の実態は、相談対応件数よりもはるかに多いと考えられています。
虐待死の件数
引用:子ども家庭庁 こども虐待による死亡事例等の検証結果等について(第19次報告)の概要
令和3年度中に発生し、
表面化した子ども虐待による死亡事例は
68例(74人)でした。
虐待死は減少傾向なのですが、
「虐待が原因」と判定する基準を適当に操作してしまえば、
数字はいくらでも変動させられるので、
件数の増減だけを見るのはお勧めできません。
児童虐待の加害者
おとぎ話では、継母にいじめられていますけど、
実際の加害者はほとんどが実の両親です。
児童虐待事例
Think Kidsで児童虐待による死亡事例がまとめられています。
ただ、事件になるような事例はそこまで多くなく
NHKのクローズアップ現代で取材されているような
日々のイライラなどから
こどもに手をあげてしまった事例の方が多いです。
児童虐待への対応
気づく
①低身長 ・低体重
②体の外傷、あざ、火傷
③骨折、頭蓋内出血などの既往
④無表情、活気のなさ、おびえ、落ち着きのなさ、多動
⑤体の汚れ、衣服の汚れ
⑥虫歯が多い、歯槽膿漏、口の中の傷
⑦年齢にふさわしくない性的な行動、表現およびことば
⑧他の子どもに乱暴、暴力的
⑨誰にでもべたべたする、親の傍に近寄りたがらない
どれか一つが当てはまれば
即虐待疑いというわけではありませんが、
複数当てはまると疑いが強まります。
①子どもと一緒にいても楽しそうでない。抱きしめたり視線を合わせたりしない。
②「子どもが嫌い」と否定的なことを言い、子どもを見る目が険しい。
③家族のことを話したがらない、ガードが固い。
④自然食や育児マニュアルに固執し、潔癖性が目立つ。
⑤新生児訪問や乳幼児健診を受けていない、または拒否する(母子手帳が真っ白 )。
⑥予防接種を受けていない。または拒否する。
⑦親の成育歴に、虐待やネグレクトがある。
⑧体の外傷、あざ、火傷など DV を疑わせる所見を認める
親御さんに一つでも当てはまれば、
子育て支援やカウンセリング、シェルターへの避難など
自治体が介入する事案となります。
毎日接触できる環境なので
ちょっとした変化にも気づけるようにならないといけません。
保育園での対応
虐待の可能性が高い場合は、
園長から自治体・児童相談所に通告します。
(その後児童相談所が介入し、一時保護になることもあります。)
最近は、入園前から
要支援家庭として自治体の支援が入っていたり
乳幼児健診で気になることがあって、
自治体から園に連絡が来たりするので、
園の方から通告するより、
自治体から連絡が来ることの方が多いです。
虐待を予防するには?
加害者の親を理解する
「こどもを虐待する親」と聞いて、
どういう親が思い浮かびますか?
鬼のような親?
自分勝手な親?
年齢が若い親?
もしそう思っているのであれば、
一度3つの記事を読んでみてください。
保護者が「不適切な養育」を行う精神状態や
具体的にどう支援したらいいのかのヒントが見つかります。
★NHK【特集】子どもの虐待(3) 虐待をやめるために親ができること
息子さんは発達障害があり、
その特性と向き合う方法が分からず追いつめられ、
両親が暴力をふるってしまったという例です。
親が趣味に没頭したり、
息子への不満をノートにつづったりなど
できることから対策して、暴力を止められたというエピソードです。
★児童虐待の深刻さと対策の難しさが理解できる数々の日本映画
映画でも児童虐待を取り上げているものがあり、
映像で見ると、余計に虐待の凄惨さや
親・家族の置かれた状況がリアルに想像できます。
★現代ビジネス 我が子を虐待する親の「悲しい真実」
上記ルポライターへのインタビューで、
NHKのものより事例が多く、長編になっています。
一部引用すると…
わが子をネグレクト死させた親たちは、
現実をもとに未来を作り出す力が弱く、
現実を見ないようにすること、
逃げ出すことで、つじつま合わせをしようとする。
自分たちを大事にすることを誰からも教わらなかった。
生きる力がある人たちは、周囲の力を借り、
経済力を使い、公的支援を使い、自分の願いを実現する。
だが、力の乏しい人たちは、周囲を動かすことができず、
唯一思い通りになるわが子を痛めつけ、自滅する。
と、虐待する親の特徴についてまとめています。
保育園でできる予防策は主に「子育て支援」
私の勤務園では…
★送迎時に保護者に声をかけて世間話をする
★お迎え時に、こどものポジティブな面を伝える
★困った時にいつでも相談して下さいというパンフレット、ポスター掲示
★保護者に指導するのではなく、一緒に考えていくという姿勢で話を聞く
などを行っています。
という方法はなく、
地道にコツコツやっていくしかないです。
児童虐待Q&A
体罰が禁止されたけど、厳しい指導は必要なんじゃない?
令和元年6月に児童福祉法等改正法が成立し、
親権者等は、児童のしつけに際して、
体罰を加えてはならないことが法定化され、
令和2年4月から施行されました。
法改正の時に、メディアで話題になりましたよね。
親からの意見として、
「子育てしづらくなる」
「厳しい指導も必要」というものがありました。
しかし教育に体罰が必要というのは誤りで、
体罰や不適切な養育で
こどもの脳の一部が変形・機能不全になり
生涯生きづらさを抱えることになるということが
脳科学領域の研究で判明しています。
※詳細はこちらの書籍で解説されています。
教育に体罰は不要で、
むしろ悪影響が深刻なので、
現在では体罰は禁止されています。
どこからが虐待?どこまではしつけ?
基本的にこどもの権利を侵害するものは虐待です。
と言うのはしつけですが、
靴を揃えないからといって殴ったり
「お前はそんなこともできないのか!」
と罵るのは虐待です。
子どもにも
「暴力から保護される権利」
「思想・良心・宗教の 自由」があります。
(こどもの権利条約の詳細はこちらです。)
もちろん親の言うことを聞かないと、
周りから変な目で見られたり、
子ども自身が恥ずかしい思いをすることもあるので、
こどもがしたことの結果は、
こども自身に返ってくるのですが、
だからと言って、子どもが親の思い通りに行動する義務はありません。
羽交い絞めにしてでも止めないといけないですが、
それ以外の平常時では
こどもの権利を侵害していないかがポイントになります。
まとめ
★一番多い虐待は、心理的虐待
★虐待加害者は実の母・父の順で多い
★虐待を受けている子どもや、加害の親には特徴がある
★保育園では、加害する親の状況を理解し支援しないといけない
★体罰禁止は子どもの脳が変形するから
★子どもの権利を侵害する行為は「虐待」