保育園の歯科健診で看護師が行うことは、以下の通りです。
★歯科医師の診察の介助
★記録の解読(看護師が用紙に記録する園もあります)
★記録をもとに、保護者へ健診結果通知
自治体や園によって健診実施方法は違います。
今回は自園での方法をご紹介します。
歯科健診物品の準備
★フロス(個包装)
★紙皿
★ゴミ袋
★アルコール消毒
★記録用紙
★鉛筆、消しゴム(筆記具)
歯鏡というのは、歯医者さんによくある
小さい鏡のついた細長いものです。
50~100本まとまって入っているものもあるんですけど、
歯鏡は個包装の方が、人数に合わせて開封できて衛生的なのですが、
歯科医師の介助につく歯科衛生士が
ひとつずつ開封しないといけないので大変そうです。
フロスって何に使うんですか?
歯間に食べ物が挟まっていたりするので、
それを除去するために使用しています。
それは人数分はいらないのですが、
毎回10個くらいは用意しています。
紙皿は介助する歯科衛生士が
歯鏡を10人分くらいまとめて開封した時に
置いておくために用意してほしいと言われました。
うちの自治体では、歯科健診セットが郵送されてきて、
健診が終わったら自治体に返却するシステムです。
うらやましいです…。
そういう自治体もあるので、
自治体からの歯科健診のお知らせをよくご確認ください。
診察の介助
うちの嘱託歯科医は、
助手として歯科衛生士1人を連れてきてくれるので、
健診記録は歯科衛生士、
こどもたちの名前の確認や怖がらないような声かけが看護師の仕事です。
健診の最中、
乳児クラスは担任がこどもの体勢を固定することが多く、
画像のように大人が椅子に座って
こどもの体勢を固定したり、
出典:まどか保育園ブログ
こどもは立って(もしくは椅子に座って)行うこともあるので、
どういう体勢で健診を行うのか
事前に打ち合わせしておきます。
園によっては、健診の記録を看護師がしないといけないこともあるので、
乳歯と永久歯の英数字と番号は覚えないといけませんよね。
そうですね。
「記録の解読」で詳しく解説します。
記録の解読
乳歯と永久歯の記録
歯科健診の記録用紙には、
このように番号とアルファベットで
乳歯と永久歯が記載されているので、
どの歯を指しているのか理解しておかないといけません。
まずは乳歯から理解しましょう。
それぞれの乳歯に名称があるのですが、
健診の時はA~Eで呼ばれることが多いです。
(前歯がAで奥歯がE)
下の左EがC(虫歯)
など歯科医師が言っているのを聞くと思います。
そして、永久歯は
こちらも、それぞれ名称がついているのですが、
健診の時は1~8までの数字で呼ばれることが多いです。
ちなみに保育園では
第一大臼歯が「6歳臼歯」と呼ばれることは知っておきましょう。
6歳前後に生えてくることから名づけられたそうですが、
永久歯の中で一番大きく、臼(うす)の形をしていて、
噛む面の溝が深くて複雑なため歯垢が溜まりやすいです。
6歳臼歯が完全に生えるまでは、
歯肉がかぶさっていて、大変磨きにくい歯です。
そのため虫歯になりやすいので要注意の歯です。
虫歯に関する用語
保育園の歯科健診では、
虫歯の有無も重要視されているのですが、
歯科医師は、診察中に虫歯のことを
C「シー」
と呼んでいます。
そして虫歯の進行が進むと数字が大きくなっていきます。
ちなみに歯科健診はスクリーニングが目的なので、
初期だろうが進行していようが、
虫歯があれば、かかりつけの歯科医院受診を勧めます。
そのため、虫歯の進行度を記録されることは少ないです。
あまりにも虫歯の数が多いとか、
重症度が高い場合は、健診時に指摘されますが…。
シーラントとは?
奥歯の溝をプラスチック樹脂で埋めて
虫歯になりにくくする予防処置のことです。
特に6歳臼歯に行うことが多いです。
サホライドとは
虫歯が小さく削るほどでもない時に、
虫歯の進行を止めるためにサホライドを塗布することがあります。
サホライドはフッ素と銀が入っていて、
●フッ素の虫歯予防作用
●銀の殺菌作用
を期待できます。
歯を削らずに、薬を塗るだけで虫歯の進行が止まるのですが、
ひとつ欠点が…。
銀が虫歯につくことにより、
虫歯の部分が黒くなるので、
永久歯の虫歯には通常使用しません。
初めて見た時は、真っ黒な虫歯がある!ってびっくりしたんですが、
サホライドを塗ると真っ黒になります。
<参考サイト>
横浜・中川駅前歯科クリニック
噛み合わせ不良(不正咬合)
幼児期に噛み合わせ不良があっても、
小学生くらいまでは特に矯正もせず、
様子見のことも多いのですが、
歯科健診の時には指摘されます。
そのため、早めに歯科受診をして、
今後の治療方針について相談することをおすすめします。
上顎前突(じょうがくぜんとつ)/出っ歯
出っ歯の原因には、
歯だけの問題と骨格の問題両方が考えられます。
指しゃぶりや舌を出す癖、唇をかむ癖も一因になります。
見た目が気になるだけでなく、
●前歯でかみ切りにくい
●唇が閉じにくい
●発音がはっきりしない
等が起こります。
<参考サイト>
日本小児歯科学会
https://www.jspd.or.jp/
下顎前突(かがくぜんとつ)/反対咬合・受け口
上の前歯よりも下の前歯が前にある噛み合わせです。
※正常な噛み合わせでは、上の前歯の方が前にきます。
顎が「しゃくれ」たような見た目になります。
歯だけの問題か、顎の骨格の問題か、
その両方の原因が考えられます。
<参考サイト>しぶたに矯正歯科
叢生(そうせい)/らんぐい
歯並びが「ガタガタ」になっているので、
知識がない状態でもあれ?と気づきます。
顎のサイズに対し歯のサイズが大きく、
スペースが足りないことによっておこります。
乳歯の時は、歯と歯の間が空いているので
「すきっ歯?」と心配になりますが、
乳歯より大きな永久歯が生えてきたときに
ちょうどいい顎のサイズに成長していくので、
むしろ、乳歯の時に歯と歯の間に隙間があることが重要です。
<参考サイト>
★しぶたに矯正歯科
開咬(かいこう)/ オープンバイト
奥歯を噛みしめても、上下の前歯に隙間があって噛み合わない状態です。
舌の癖と咬む力が弱いことが原因で起きます。
前歯で食べ物をかじったりできません。
自園での歯科健診で、開咬を指摘された子は、
みんな指吸いをしていました。
精神安定剤のこともあるので、
指吸いを無理やり直さない場合もあるのですが、
指先を使う遊びを増やすなど
対策は必要になります。
交差咬合(こうさこうごう)
一部の歯のかみ合わせが反対です(下の歯の方が前に出ています)。
バランスの悪い顎の成長、指しゃぶり・舌の癖・口呼吸・ほおずえなどの癖、後天的要因が主です。
あごの成長に影響が出たり、
顎関節症を起こしやすいなど、
見た目だけではなく、健康面でも問題が出やすいです。
<参考サイト>
日本小児歯科学会
過蓋咬合(かがいこうごう)/ ディープバイト
奥歯をかみしめた状態で
上の前歯が下の前歯に過剰に覆いかぶさっている状態です。
顎の動きに制限が加わり顎の関節に痛みが生じたり、
咬むたびに歯茎を刺激し、歯肉炎になることがあります。
●下顎が上顎より後方にあること
●乳歯の奥歯をむし歯などで早期に失い、
咬む力に耐えきれず奥歯が沈んだり十分に伸びてこないこと
などが原因と考えられています。
保護者への結果通知
保護者へのお知らせは書面で行うことが多いのです。
自治体によっては統一書式がある場合もあるので、
事前に確認しておいてください。
ちなみに、私は保護者から
「虫歯ってどの歯ですか?」と聞かれることも多いので、
右下A(前歯)など記載して渡しています。
園の健診で虫歯があるって言われたから受診したのに、
受診先の歯科医師から「虫歯はない」って言われたって
クレームを受けたことがあるんですが…。
園で実施しているので、
歯科医院と比べると環境や物品が劣ることや
歯科健診はスクリーニング目的なので、
精査や治療はかかりつけ歯科医院でというスタンスだそうです。
その辺も事前に保護者に伝えておかないといけないですね。
保護者へ定期歯科健診の重要性を伝える
小さい子でも歯石が溜まっていたり、
歯肉炎になっていることが珍しくありません。
3~6か月に1回は、定期的に歯科受診し
虫歯がないか、噛み合わせや歯並びは大丈夫か、
歯石除去やブラッシング指導などを受けることが重要です。
保護者の中には、保育園の歯科健診で
虫歯など異常を指摘されたら歯科受診すればいい
と思っている人もいるので、
「予防歯科」の概念を伝える必要があります。